for God’s sake



<1>



最近、先輩は日曜の夜になると元気がなくなる。
目にはわからないくらいの変化なんだけど、ぼくにはわかる。

バイトから帰ってきて、少し遅い晩ゴハンを食べた後も、ソファにすわってため息の連続。



何か心配事でもあるの?



聞きたいのに聞けない。
この間、あの公園で先輩を見つけて取り乱してしまったぼくに、先輩はお母さんの話を聞かせてくれた。
先輩と同居するようになって三ヶ月。初めて先輩の境遇について知った。
先輩は、ぼくをひとりになんてしないと言ってくれたけど、自分と同じく身寄りのないぼくへの憐れみと、お姉ちゃんの弟だからと言う理由からだとわかっている。
それ以外に、こんなぼくのことを気にかける理由なんてないから。



ぼくはそれでもよかった。
先輩と同じ時を過ごせるなら、それでもよかった。
あの日、先輩が自分の話をしてくれて、さらに後ろからすっぽり包まれて、ほんの少し距離は縮んだとは思う。
だけど根本的な気持ちには何の変わりもなかった。
ぼくと先輩の関係なんて、そんなもの・・・
だからこそ、先輩に何も聞けない。
うるさい、ウザイと思われたら・・・先輩に嫌われたら・・・・・・
友樹がうらやましい。
友樹は先輩に何でもズケズケとモノを言う。何の遠慮もない。
先輩も友樹との会話はすごく楽しそうだ。
ぼくが、友樹みたいな性格だったら、年下の友達みたいな関係になれたのにな・・・?








「麻野、おまえって確か勘がスルドイとか言ってたよな?あれ、マジ?」
土曜の夜、ぼくがリビングで雑誌を見ていると、突然先輩が尋ねてきた。
「そうですね・・・普通の人よりはいいほうかもしれないです」
「例えば・・・?」
先輩は、身を乗り出して真剣そのものだ。
「何となく選んだチョコボールに銀のエンゼルマークがついてたり・・・」
「他は・・・?」
「くじびきでもよく当たるし・・・」
「もっとある・・・?」
「特に選択に強い気がします。この中から当たりを選んでみてとか・・・?」
それを聞いて、先輩はにやりと笑って言った。
「麻野、明日はおれに朝から付き合ってくれ」

                                                                       





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